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【メンタルってなんやねん!】環境が良くなると失うものがある。不自由な環境がメンタルを強くする

卓球のメンタルって「なんやねん」

卓球王国2025年3月号掲載

Text by

岡澤祥訓Yoshinori Okazawa

●メンタルトレーナー 岡澤祥訓(おかざわ・よしのり)
奈良教育大名誉教授。卓球の日本代表、プロ野球、柔道などの競技でメンタルトレーナーを務めている

強い相手を求めて電車で5時間かけて練習に行くこともあるという上田仁はブンデスリーガで活躍。「不自由さがとても大切です。完璧ではないことや、不自由さ、足りないものがあること。逆の言い方をすれば、その環境が集中できるということに置き換えられるのです」(上田/右から2人目)

いつでも練習できる選手たちは、いつでも練習をしない

 卓球でも他の競技でも、競技力向上という観点で見ると、日本はナショナルトレーニングセンターをはじめ、非常に良い環境が整っていると言えます。また、いつでも練習ができるクラブチーム、実業団チーム、学校も増えています。
 悪い環境より良い環境のほうが選手にとって幸せであり、成績向上に役立つ要素です。しかし、環境が整うことで失われるものも多くあります。それは物理的なものではなく、メンタル面での損失です。たとえば、練習に対するモチベーションや集中力の低下などが挙げられます。
 素晴らしい練習環境を持つチームには不自由さがありません。しかし、いつでも練習できる環境では、意外にも卓球台が空いたままになっていることがあるのではないでしょうか。つまり、「いつでも練習できる選手たちは、いつでも練習をしない」ということです。
 一方、インターハイ上位の強豪校でも、体育館の物置きを改装した狭い練習場で、限られた時間内で練習を行うチームも存在します。こうした選手やチームは、限られた条件の中で一生懸命工夫をして練習します。工夫とは、「どうやったらもっと良い練習ができるのか」「どうやったら試合で勝てるのか」を考えることです。
 練習環境の良いチームでは、練習できることが当たり前になり、練習を工夫することや練習時間の大切さを忘れてしまうこともあります。
 逆に、チームが弱いことや強くなれない理由を環境のせいにするのは適切ではないと感じます。卓球台が少ない、練習時間が少ない、指導者がいないといった環境でも強くなった選手やチームは多く存在します。選手が強くなるうえで、環境は重要な要素のひとつですが、それ以上に重要なのは選手や指導者のメンタルではないでしょうか。

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