[ワルドナー伝説]vol.14 金色に輝いたバルセロナ
『100年にひとりの天才』と称された、ワルドナー(スウェーデン)の半生に迫った書籍『ワルドナー伝説』(卓球王国刊・絶版)。人気を博した1冊を卓球王国PLUSでプレイバック
Text by
イエンス・フェリッカJens Fellke
第2章 達人への道
From Mascot to Master
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10 金色に輝いたバルセロナ
■千葉大会の決勝でパーソンに敗れる。惨敗にワルドナーはショックを受けた
90年にスウェーデンのイエテボリで行われたヨーロッパ選手権。男子団体でスウェーデンはドイツを倒し、優勝を飾った。シングルスでは、ワルドナーは準々決勝でフランスのガシアンと対戦した。とてつもなく動きの速い、左利きのドライブマン、精神的にも崩れないフレンチプレーヤー、ジャン-フィリップ・ガシアンとの試合は、この大会のベストゲームとなった。両者の凡ミスは少なく、ハイピッチでしかもダイナミックなラリーが続いた。
ワルドナーは2−1とリードした4ゲーム目にマッチポイントを奪い、かつ最終ゲームでも20−16と再びマッチポイントを握った。ところが、この局面でもガシアンは果敢に攻めることを躊躇せず、強烈なドライブで攻め続けた。ワルドナーはブロックでミスを重ね、ついに20−20とガシアンが追いついた。ワルドナーがフリックをネットミスし、次のバックハンドブロックもネットにかけた。そして、ワルドナーはこのヨーロッパ選手権から姿を消した。
「6本のマッチポイント……。このイエテボリでのガシアン戦はぼくのキャリアの中でも、もっとも苦い敗戦の思い出なんだ」とワルドナーは記憶している。
翌91年、世界選手権は日本の千葉で開催された。ワルドナーはガシアンに対して雪辱を果たした。準々決勝で対戦し、つけ入るスキを与えないほどの集中力を見せ、最終ゲーム21−14で下した。
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