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[ようこそ卓球地獄へ/アメリカン卓球ライフ]アメリカ卓球用具事情

卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第4章 アメリカン卓球ライフ>より <その38>

 

Text & Illustration by

伊藤条太Jota Ito

ゲイリーが「コントロールがいいから好きなんだ」といっていた。わかってるじゃないか

 アメリカの卓球の競技人口の割合は日本の40分の1だが、実は卓球台の消費は世界一であることはあまり知られていない。そう、スポーツではなくて遊戯としては大変な普及率を誇っているのだ。職場でも、家に卓球台があるという人が何人もいるし、スーパーマーケットでもラケットやボールだけではなく卓球台まで売っている。

 職場にゲイリーという年配のアメリカ人がいたのだが、少年時代に卓球にかなり熱中していたという。どんなラケットを使っていたか聞くと、なんとサンドペーパーラケットだと言う。私は耳を疑った。サンドペーパーっつったらあんた、1902年にイギリスのE・Cグッド氏が薬局のつり銭皿のゴムをラケットに貼って優勝してラバーが爆発的に普及する以前のものだ。いくらゲイリーが年寄りだといっても、彼が少年だった1960年代には、そんなものとっくにルールで禁止されていたし、存在さえしたはずがない。私ほどの卓球狂でも実物を見たことは一度もない歴史上の用具なのだ。ところが「普通に店で売ってたよ」という。さすがアメリカ、国際ルールなど知ったことではないのだ。

 その後、卓球の試合に出るため、バーミングハムというアラバマ最大の都市に行き、BumperNetという卓球専門店に行った。なんとそこに、サンドペーパーラケットが堂々と売っていたのだ。製品名は『Thunder』だ(どうせならSanderの方がよかったのに)。しかもあきれたことに「アメリカ卓球協会公認」と書いてある。いったい何を公認したというのか。ルール違反であることか。店員に「どうしてこれが公認なのか」ときくと「いや、ルール違反だ」と繰り返すだけであった。いっちょまえに“スピード40、回転30、コントロール100”と書いてあるところが泣かせる。回転が30もあるのか。そういえば、ゲイリーが「コントロールがいいから好きなんだ」といっていた。わかってるじゃないか。注意書きには“ボールの耐久性が落ちます”とも書いてあった。そりゃそうだろう。即ゲット。

即、買って打球してみると、やはり回転もスピードも出ない非の打ちどころのないクソラケットであった

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