
「WTTの将来の夢は、成長を加速させ、5年以内に賞金を倍増させることです」デイントンCEO
卓球王国2025年11月号「WTT、熱狂の横浜は何を語るのか。」
WTTチャンピオンズで横浜が沸いた。張本智和が世界王者の王楚欽を破って優勝した。「卓球のイベントが変わった」と観客が感じた。WTT横浜を通じて、卓球の今と未来を語ってみよう。
写真=中川学

Steve Dainton スティーブ・デイントン
オーストラリア生まれ、47歳。2017年にITTF(国際卓球連盟)のCEO(最高経営責任者)に就任し、2021年にはITTFグループ(ITTF・ITTF財団・WTT)のCEO、同時にWTTのCEOに就いた
Interview by
WTTには卓球出身の人材は極めて少ない。だからこそ斬新な発想でイベントを進めているようにも見える。数少ない卓球選手という経歴を持つスティーブ・デイントンCEOに話を聞いた。


WTT横浜を盛り上げた二人、男子優勝の張本智和と孫穎莎
これまでで最も早くイベントカレンダーを発表しました。カレンダー、財政、イベント運営が安定してきた証拠です
2021年。それはWTT(ワールド・テーブルテニス)にとって「不運なスタート」だった。2020年からの新型コロナによるパンデミックで、大会開催や選手の移動が困難な時期にWTTは創設された。各イベントの会場も定まらず、それまでのワールドツアーとは規格の全く異なるWTTイベントが、中止や延期となり、WTTは多くの批判を浴びた。
あれから4年経ち、WTTはスマッシュ4大会、チャンピオンズ6大会、その下にスターコンテンダー、コンテンダーという大会を据えて、本格的に始動している。従来の各国のプロリーグとの両立を考えながら、選手たちも順応しているように見える。エンターテインメント(興行)として落ち着きを見せ、以前のワールドツアーよりも賞金額も高くなっている。
CEO(最高経営責任者)のスティーブ・デイントンはオーストラリア出身。卓球の伝統国という背景を持たないために、新しい発想でこの事業を進めることができたのかもしれない。彼はこの4年間をどう総括し、これからどのようにWTTを進めていくのか。
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●ーWTTを設立してから4年が経ちました。
スティーブ・デイントン(以下SD) 新しい挑戦を始めるのは決して容易ではありませんでした。設立当初から「WTTとは何なのか」と多くの疑問が投げかけられ、しかもコロナ禍でのスタートで、本当に難しかったですね。WTTが発足した最初の年は苦労しましたが、今年(25年)が初めての「完全なシーズン」となり、大きな喜びを感じています。
2週間前(7月)には2026年のイベントカレンダーを発表しました。これまでで最も早い公開であり、カレンダー、財政、イベント運営が安定してきた証拠です。人々がWTTを認識し始め、楽しんでくれるようになりました。コートや会場の雰囲気も良く、観客は幸せな気持ちになっています。最高の選手が集まり、従来よりも多くの試合が行われています。
以前はオリンピックや世界選手権、ワールドツアーなどがありましたが、選手の参加は不定期でした。今では「チャンピオンズ」や「スマッシュ」にはほぼすべてのトップ選手が参加し、真剣勝負を繰り広げています。その結果、ハイレベルな卓球を定期的に見ることができるようになり、大きな進歩だと考えています。