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「WTT横浜の熱狂」国境を越える声援。海を渡る「推し活」の物語 

卓球王国2025年11月号「WTT、熱狂の横浜は何を語るのか。」

WTTができてからの新しい現象、それは選手個人への熱烈な「推し活」だ。予想どおりだったが、横浜には中国からの「飯圏」(ファンチュエン)と呼ばれるファングループが大挙して押し寄せ、BUNTAIを熱くした。彼女たちに「推す理由」を聞いてみた。
写真・取材=楊奇真

試合の合間に「推し活グループ」同士で「推しグッズ」を交換。自作の推しグッズを100個単位で制作し、配布する(上)

Text by

楊彩乃Ayano Yo

横浜に世界のトップランカーが集い、白熱の試合が続いたWTTチャンピオンズ横浜2025。会場の空気は、試合前の静けさから一転、ラリーが続くたびに大きな歓声と拍手で揺れた。だが、その熱狂はコートの中だけではない。観客席やロビーでも、もうひとつの世界が繰り広げられていた。それは、推し選手を全力で応援するファンたちの、国境を越えた物語だった。

中国から張本の応援のために駆けつけた三人組。かばんにはハンドメイドの「張本グッズ」がびっしりとついていた

中国から「ハリー推し」の情熱。中国人でありながら、張本対中国選手の対戦で迷わず張本を応援する

 大会4日目の夕方、会場アナウンスが「女子シングルス準々決勝・孫穎莎(中国)vs大藤沙月」と告げると、多くの観客がメインアリーナへと移動していった。孫穎莎を熱狂的に応援する中国のファンにとって、注目度の高い一戦。しかしその流れとは逆に、足早に会場を後にする三人組の若い女性たちがいた。

 「私たちは張本智和のファンです。前の試合で向鵬(中国)に勝ったのを見届けたので、満足して帰ります」

 彼女たちのバッグには、所狭しと自作の「張本グッズ」が飾られていた。中にはサイン入りのキーホルダーや、日本語が書かれたオリジナルグッズまで。

 中国から飛行機で約6時間。乗り継ぎを経て東京へ、そして地下鉄で会場まで駆けつけた。そんな三人組の女性は、中国の大学生。張本智和を応援するために来日したという。

 「彼は闘志があって、試合の中で表情や動きが生き生きしている。応援をするのに国籍は関係ないんです」。向鵬との男子シングルス準々決勝で4ー2と勝利した張本の姿をしっかりと目に焼き付け、パワーをもらったという。

 三人が張本を応援し始めたのは昨年。きっかけはWTTチャンピオンズ重慶大会での出来事だった。

 「私はその時、大学生でボランティアとして大会に参加していました。最初は張本選手のことを知らなかったんです。ただ、初めて見た時に『なんてハンサムなんだろう』と思って。その上、ボランティアの私たちにも、とても丁寧に、優しく接してくれた」

 そこから張本への関心が高まり、パリ五輪の試合、その後の世界卓球も欠かさず応援した。

 ここで興味深いのは、彼女たちが中国人でありながら、張本対中国選手の対戦で迷わず張本を応援することだ。従来の「自国選手優先」という観戦スタイルとは明らかに異なる現象が起きている。

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