呉光憲の申裕斌への手紙「申裕斌だったらできるよ。申裕斌らしくプレーすればいいよ」。彼はパリに爪痕を残し代表チームを去った
「伊藤監督」という作られた存在と、「渡辺武弘」という陰の存在
卓球王国2024年5月号掲載「クローズアップ」
あと少しだった。日本女子は53年ぶりの世界優勝に手をかけた。
その日本チームで、ことさらテレビが追いかけたのは伊藤美誠。
しかし、「実際に中国との決勝ですごかったのは早田であり、平野であり、張本なんです」と渡辺監督が強調した。
多くのメディアが「伊藤監督」という表現に乗っかった。しかし、真実は違う。
王者中国を追い詰めた日本。表で支えた人と裏で支えた人がいた
Text by
今野昇Noboru Konno
「渡辺さんは『ベンチでたくさん話をしてね』と言ってくれました。渡辺さんがいたからこそチームが良い雰囲気になった」
2月24日の午後8時に始まった世界卓球の女子決勝。
3時間40分に及ぶ攻防。53年ぶりの世界優勝に挑む日本と、国の威信をかけ王座を守ろうとする中国。「中国が強すぎて世界の卓球界がつまらない」と言われようが、「テレビ向けの大会運営とスケジュール」と皮肉を言われようが、そこで戦う選手たちが織りなすドラマには筋書きがなく、感動のシーンが押し寄せ、興奮だけが高まっていく。