「プロ選手の生活」と「WTT&世界ランキング」との戦い
2024年卓球王国6月号掲載 「クローズアップ」より
世界ランキングは励みでもあり、プロ選手を縛ることにもなる
コロナ禍が明け、WTT(ワールドツアー)が本格的に稼働しているが、
その過密なスケジュールのために各国のクラブリーグが悲鳴を上げている。
プロ選手たちの生活基盤はツアーの賞金ではなく、クラブからの給料で成り立っている。
ナイジェリアのアルナの抗議に選手から賛同の声が上がっている。
Text by
今野昇Noboru Konno
アフリカの英雄アルナが猛抗議「ぼくが世界のトップにいる黒人であることが罪なことなのか」
これはクラブから収入を得るプロ選手とWTTとの戦いでもある。
4月2日にITTF(国際卓球連盟)から世界ランキングが発表された後、アフリカのスーパースター、クアドリ・アルナ(ナイジェリア)がSNSで猛烈に抗議した。
19位だったアルナは22位にランキングを落とした。世界ランキングは現在、過去1年間の大会成績のうち、上位8大会のポイントの合算で作られる。ところが、アルナは世界卓球釜山大会を慢性的な下痢によって体調を崩して欠場。その後のWTTシンガポールスマッシュとWTTチャンピオンズ(韓国・仁川)の2大会を棄権していた。スマッシュは体調不良、チャンピオンズは所属クラブであるドイツの「ノイ・ウルム」のヨーロッパチャンピオンズリーグ(ECL)・ファイナル4と日程が重なったためだ。
この2大会の棄権に対して、WTT(ITTF傘下のツアー運営団体)は、アルナに対するペナルティーとして「(ランキング対象の8大会のうち)2大会が1年間ゼロポイント」として計算され、さらに規則どおりに罰金を科すという。つまり通常は8大会のポイント合算だが、アルナの場合は1年間は6大会の合算になる。