伊藤美誠「東京で金メダルを獲れなかったことに罪悪感のようなものがありました」
卓球王国2024年5月号掲載「伊藤美誠・独占インタビュー」
[スターツ]東京五輪金メダリスト
いとう・みま
2000年10月21日生まれ、静岡県出身。全日本選手権では3度優勝。2016年リオ五輪の女子団体銅メダル、2021年の東京五輪では史上初の混合ダブルス金メダル、女子シングルスでは史上初の銅メダル、女子団体銀メダルを獲得。世界ランキング12位(24年3月現在)、スターツ所属
「オリンピックでの金メダルは成し遂げられなかったけど、世界ランキング1位と誰も成し遂げていないことをやりたい」
「ここまで頑張ったね、お疲れ様」と言われた時、その言葉が心にしみました。
長く苦しい五輪代表の選考レースはなだれ込むように1月の全日本卓球の結果にゆだねられた。同級生でかつてのダブルスパートナー、東京五輪でともに戦ったチームメート、平野美宇(木下グループ)との非情な争い。
6回戦でふたりのマッチレースは終わり、伊藤美誠はパリ行きの切符を逃した。彼女の五輪への思いを知る人は、「伊藤は引退するのでは……」と予測したかもしれない。しかし、彼女が出した結論とは……。
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●─昨年11月の選考会が終わり、全日本選手権で代表が決まる展開になりました。
伊藤 全日本で美宇ちゃんより2回(2ラウンド)上に行かないと無理だというのはわかっていました。でも切羽詰まった感じはなかったし、やり切るしかないと。プレッシャーもなかった。追いかけるほうはそうだし、美宇ちゃんのほうがプレッシャーはあったと思います。私は焦ってもしょうがない、やり切るだけだと。
●─そして全日本での争いでした。
伊藤 よくここまで頑張ったな、よく追い上げることができたなと。もっと下のところにいてもおかしくない精神状態でした。卓球を楽しむという気持ちになるまで持ってこれたと思います。あの頃、代表権もそうですけど、卓球の楽しさを取り戻すことも目標のひとつだったので、ひとつは叶えられました。「コーチなし」でやることによって、ひとりでやって、いろいろなところに練習に行ったり、多くの選手と練習をやって、卓球を楽しいと思えたし、取り戻すことができました。