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【People】「ファンから愛されるチームを」T.T彩たまを明るく彩る新監督・水野裕哉

[T.T彩たま 監督]

[みずの・ゆうや]
1987年2月28日生まれ、岩手県盛岡市出身。仙台育英高、明治大、東京アートで選手として活躍。09年全日本混合複2位、13年全日本社会人複優勝。17年に引退後にTACTIVE、明治大などでコーチを歴任。フリーランスで指導・講習会などを行う。24年4月にTリーグ「T.T彩たま」監督に就任

Text by
高部大幹Hiromoto Takabe

坂本竜介さんや岸川聖也が成し遂げられなかった優勝を達成できるかもしれない。監督としてなら彼らのような偉大な人たちにも勝負ができるのでは

 仙台育英学園高時代には、1学年下の岸川聖也らとともにインターハイ学校対抗2連覇。名門チームで活躍後、コーチ業を続けていた水野裕哉は24―25シーズンから、岸川の後を継いでT.T彩たまの監督に就任した。

 現役時代にもイベントで指導経験があった水野。現役を引退する頃、東京近郊に卓球場を展開する「TACTIVE」が開業したため、声をかけられてコーチ業に就いた。培ってきた卓球のノウハウと、年代・性別を問わずに誰とでもコミュニケーションを取れる能力は、明らかに“コーチ向き”だ。

 TACTIVE、明治大などで指導を続けてきた水野に、Tリーグ監督の白羽の矢が立ったのは、今年1月初めのこと。「話をいただけたのは、素直にうれしかった。でも、厳しいプロの世界で、監督経験のない私ができるとは、正直思えなかった」。

 しかし水野の心を動かしたのは、彩たま側からの熱いオファーだった。「ぜひベンチをうるさくしてほしい」。水野の明るさが、成績が伸び悩む彩たまの雰囲気を一変させることを、役員たちは期待していた。

 そしてオファーを引き受けた理由のもうひとつは、負けず嫌いの性格だ。

 「戸上隼輔のベンチに入って、『チャンプを育てたい』という夢は叶い、自信にもなった。でも、彼自身が頑張った部分は大きいし、『戸上だから勝てたんでしょ』と言われるのも嫌だった。Tリーグの監督になれば、より多くの選手を育てていけると思いました」

 また、岸川聖也の存在も大きい。

 「現役時代、ずっと聖也に勝ちたくて、卓球人生の中で彼は大きな存在だった。その聖也の後を継げるというのがうれしかった。坂本さん(竜介/前々監督)や聖也が成し遂げられなかった優勝を達成できるかもしれない。選手では勝てなかったけど、監督としてなら彼らのような偉大な人たちにも勝負できるのでは、と思ったんです」

2013年度全日本社会人卓球選手権・男子ダブルスでは、大矢英俊(写真左)とのペアで準優勝。大矢、高木和卓、張一博、塩野真人らを擁する東京アート全盛期に8年間在籍した水野

 彩たまの役員は、選手獲得についても水野に一任。町田進一郎コーチとも相談しつつ、今季の選手布陣を固め、選手と密にコミュニケーションを取る。

 「たとえば月1回の講習会に、選手に参加してもらえないかと打診したら、皆、快諾してくれた。ジュニアを育成し、地元のファンと交流でき、よりファンに応援してもらえて、皆にプラスになる。彩たまはファンが熱いけど、さらにファンから愛されるチームを作らないといけない。そういうことができる選手を獲得するのも大事です」

 そんな選手のひとりが、3季ぶりにチームに復帰する〝ジンタク〟こと神巧也だ。神と水野の存在だけでも、チームのムードは一気に熱を帯びるだろう。

 「皆が自由にできるけど、きちんとすべきところはする。勝つだけでなくファンに支持されることが、彩たまという会社を存続させる。そういうプロとしての考えも、選手に知ってもらいたい。

 橋津文彦先生(元・仙台育英高)、大森隆弘監督(元・東京アート)、髙山幸信監督(明治大)など、皆さんの良いところを取り入れつつ、自分の良い部分を加えていきたい。恩師たちは、『いつか越えられたらな』と思う存在です」

 明るさ、コミュニケーション能力、バランス感覚、負けず嫌い。水野には監督として多くの資質がある。今季の彩たまの快進撃が、今から楽しみだ。

23-24シーズンは10勝6敗と好勝率をあげた小林広夢・曽根翔ペア。新戦力が加わる来季もチームの核としての活躍が期待される