呉光憲の申裕斌への手紙「申裕斌だったらできるよ。申裕斌らしくプレーすればいいよ」。彼はパリに爪痕を残し代表チームを去った
[卓球本悦楽主義10] 普通ではない希有な才能が放つ。荻村ならではの興味深い戦術解説
〈卓球専門書の愉しい読み方10〉卓球王国2004年10月号掲載
Text by
伊藤条太Jota Ito
「世界の選手に見る卓球の戦術・技術」 ー後編ー
■ 荻村伊智朗・著[ 昭和四十二年・平成十四年 藤井基男監修 卓球レポート編集部(株式会社タマス)発行]
普通ではない希有な才能が放つ。荻村ならではの興味深い戦術解説
第二章には世界の名選手たちの戦術・技術が極めて理論的に分析されており、見どころが満載である。しかし、なんといっても印象に残るのは、世界でもっとも偉大な卓球選手は「荻村伊智朗」なのだということだ。なにしろ他の選手の紹介は、それぞれ三~五ページなのに対して、荻村自身にはなんと十六ページも使っているのだ。それだけ荻村の卓球が卓球史で突出したものであるということだろうが、問題は「普通、そういうことを自分で書くか」ということである。
しかし話は簡単、彼は普通ではないのだ。世界選手権で十二個もの金メダルを取り、国際卓球連盟会長にまでなった男が普通であるはずがない。明晰(めいせき)な頭脳、希有(けう)な表現力と行動力、そして異常なまでの自信、それが荻村伊智朗なのだ。