こだわりすぎた男たち Vol.6 政本尚
[卓球本悦楽主義14] 中高生向きに丁寧だが、内容は宗教的ですらある高い視点での教え
〈卓球専門書の愉しい読み方14〉卓球王国2005年2月号掲載
Text by
伊藤条太Jota Ito
「 中高校生指導講座Ⅱ」
■ 荻村伊智朗・著[昭和五十一年 卓球レポート編集部] ※現在は絶版
中高生向きに丁寧だが、内容は宗教的ですらある高い視点での教え
「中高校生指導講座1」の続編。卓球レポートでの同名連載の1963年から1968年までの掲載分をもとにまとめたものである。著者の荻村伊智朗は、この連載中、4年間にわたって全日本のヘッドコーチを務めており、その指導の考え方も本書で知ることができる。
前編「1」では、技術的にはレシーブまでが書かれていたのだが、本書では、あらためてスポーツに対する心構え、考え方が、中高校生に向けて語りかけるように丁寧に書かれている。おそろしく高い視点で語られるその教えは、宗教的ですらある。
荻村は「素質」についての考え方を次のように書く。
人はよく素質を問題にする。私も素質というものはあると思う。ただし、「素質」という一言で片づけられるにしては、あまりに多くの要素を「一流の卓球選手となるための素質」は含んでいる。天才はいるか。いる。君だ。
君は「自分は世界にたったひとりしかいない天才だ」と思わねばならない。一方では、「他の人もみんな、一人ひとりが天才だ」と思うことのできる心の余裕を残してほしい。「自分は天才だ」と、ほんとうに思えるときは、「天才はいない」ということに人は気づくのである。