呉光憲の申裕斌への手紙「申裕斌だったらできるよ。申裕斌らしくプレーすればいいよ」。彼はパリに爪痕を残し代表チームを去った
[卓球本悦楽主義20] 卓球界の頂点に立った荻村が贈る、極上の卓球夜話本
〈卓球専門書の愉しい読み方20〉卓球王国2005年8月号掲載
Text by
伊藤条太Jota Ito
『私のスタンディング・オベーション』
■ 荻村伊智朗・著[平成三年 日本卓球(株)] ※現在は絶版
卓球界の頂点に立った荻村が贈る、極上の卓球夜話本
卓球専門誌「ニッタク・ニュース」で連載された「世界の人々」に加筆修正してまとめたものである。この連載は、当時国際卓球連盟会長だった荻村伊智朗が、世界で活躍する現役選手を毎月ひとりずつ紹介するもので、87年から4年間続いた。選手の技術だけでなく、人柄やエピソードに得意の昔話をまじえてその魅力を紹介する、秀逸な連載であった。
本書ではタイトルもスタンディング・オベーション(立ち上がっての拍手喝采)と新たにし、選手の写真も大きくレイアウトされ、卓球の素晴らしさ、深さ、厳しさがおだやかに慈しむように語られる。まさに極上の卓球夜話本として、ぜひとも手元におきたい珠玉の一冊である。
荻村は序文で次のように語る。
天才に錬金術はない。
ダイヤモンドの原石を持った人だけが、その才能を磨いて、磨いて、磨き抜いて、輝かしい光を競いあうことを許される。その場が世界選手権大会なのだ。
「一たび球界にゲーテいずれば、いかに多くの選手たちが無名の詩を綴らねばならぬことか。」と竹内孟は彼の小説に咏った。高校生の私は、その言葉に慄然としたことを覚えている。