[アーカイブその4]馬龍、語る。「確かに世界選手権で優勝したことは階段を一段上がったことだけど、これは始まりでもある」
百年の茅台酒が語る秘話⑥
〜松﨑キミ代と周恩来の友情〜
1949年の中華人民共和国の建国後、常に実務の中枢で活躍し、
「不倒翁」と称された周恩来総理は、1976年に逝去した。
それから35年の月日が流れ、中国を訪れた松﨑キミ代は、
周総理から送られた茅台酒を、その故郷の茅台酒工場へと送り届けた。
日中両国民の深い友情の記念碑とするために。
文=李永亮 text by Nagasuke Li(アジア芸術文化協会 理事長)
翻訳=古屋順子 translation by Junko Furuya
写真提供=松﨑キミ代 photo courtesy of Kimiyo Matsuzaki
「このお酒は中国で、永遠に日中両国民の
深い友情を語り続けていくでしょう……(松﨑キミ代)
貴州に到着し、湿り気を帯びた空気を吸い込んで、松﨑は格別な親しみを感じた。かつて世界の卓球界を騒がせた微笑みの女神は、今でも足取りは軽く、穏やかな笑みを絶やさない。しかし74歳の自分はもう若くないと感じ、周総理から贈られた茅台酒に新しい居場所を探して、周総理がまいた日中友好の種を何世代にもわたって伝えていかなくてはならないと思ったのである。
彼女は長いこと考え続けた。あるとき、東京でオークション業に携わっていた中国人の友だちから「この茅台酒がもしオークションに出されたら、きっととんでもない値がつくよ」と声を掛けられた。