【アーカイブ/Another Story】政本尚/空前絶後の9種目完全制覇に挑む 『ミスター・マスターズ』
卓球王国2016年3月号掲載[アナザー・ストーリー/政本尚]
[Another Story 疾走するアスリートたち]政本尚(清友クラブ)
まさもと・ひさし
1951(昭和26)年8月31日生まれ、岡山県出身。
小学5年生で卓球と出合い、玉野高2年時にインターハイで3回戦進出。
同志社大に進学し、大学2年時に全日本ダブルスベスト8、大学4年時に全日本学生ベスト8。
全日本選手権では一般の部に通算29回出場し、37歳の時にベスト8進出を果たした。
全日本マスターズではサーティ(30歳代)から各年代を制し、これまでに9回優勝している。
右ペンホルダー裏ソフトドライブ型。
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試合での雰囲気は、意図的に作っている部分もある。
感情を顔に出して読まれてはいけない
政本尚という選手の、忘れられないワンシーンがある。
2015年3月に行われた東京選手権・年代別、シックスティ(60歳代)の部。まだ早いラウンドだった。シックスティの部で4連覇を狙う政本は、大量リードを奪っても、顔色ひとつ変えない。切れたツッツキは対戦相手を試すようにゆっくりと飛び、低く正確なバックショートが連続攻撃を許さない。試合はあと数本で終わろうとしていた。
ここで、対戦相手が最後の抵抗を試みる。政本の厳しいショートに対して回り込み、決死のフォアスマッシュで打ち抜いた。並の選手なら、よくぞ打ったと苦笑いを浮かべながら、「ナイスボール」のひと言くらいつぶやく場面だ。
しかし、後方に転がったボールに目もくれず、台の前に仁王立ちになった政本。大きくガッツポーズを決める相手を、発止とにらみつけた眼差しの、あまりの鋭さ。コートサイドで思わず背筋が伸びた。
政本尚、64歳。全日本選手権一般の部に通算29回出場し、全日本マスターズでは4つの年代で計9回の優勝を誇る「ミスター・マスターズ」。

