上田仁はなぜ今季で引退するのか。ブンデスで活躍しているのに、「『選手としての上田』よりも『戸上のコーチとしての上田』がまさった」

卓球マニア養成ギブス[ようこそ卓球地獄へ]私の中学時代
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第2章 卓球・卓球・卓球>より<その8>

Text & Illustration by
伊藤条太Jota Ito
「今日は卓球とゴルフのどっちをやりたい?」と聞かれて「卓球」と答えて泣かされた
私が卓球と出合ったのは、小学校高学年の頃だった。近所の集会所で子供会か何かの集まりがあった。そこに大工だった私のひい爺さんが作ったという手作りの卓球台があったのだ。そこで私は、自分が他の子供たちより卓球が上手いことを発見した。野球にしてもドッジボールにしても、そういうスポーツは他になかったので、卓球はすぐに特別なスポーツになった(こういうところが卓球の特異なところだ)。
そんなわけで、中学(岩手県奥州市立小山中学校)に入ると迷わず卓球部に入ったが、そこは怖ろしい先輩たちの巣窟(そうくつ)だった。仮入部の間は「才能あるぞ」などとおだてられていたが、正式に入部すると態度が豹変した。卓球は全然させてもらえず、きつい体力トレーニングと球拾いだけで、ボールを捕り損なうとその回数だけビンタ、毎朝の部室そうじに先輩より遅く来たらビンタという部だった。ビンタされたくないので七時前に部室に行くと、すでに先輩がいた。ビンタしたさに、六時に来たと言う。アホだ。