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【メンタルってなんやねん!】「才能」をほめるのか、「努力」をほめるのか

卓球のメンタルって「なんやねん」

卓球王国2024年5月号掲載

Text by
岡澤祥訓Yoshinori Okazawa

●メンタルトレーナー 岡澤祥訓(おかざわ・よしのり)
奈良教育大名誉教授。卓球の日本代表、プロ野球、柔道などの競技でメンタルトレーナーを務めている

2024年の世界選手権の決勝で中国の王芸迪(ワン・イーディ)を見事なプレーでストレートで破った平野美宇。日々、練習を積み重ねた成果が出た

才能ある、器用だと言われている人ほどなんでもできるがトップには行かない

 指導者と話をすると、「あの子は才能あるな」「あの子は才能がちょっと……」と言う人がいます。同様に、「将来、この子は伸びる、強くなる」と説明する指導者もいますが、それは抽象的なもので、理解できるようでいて、実際には理解できない言葉でもあります。

 たとえば、なんでもすぐに覚える子、習得の早い子がいます。一見すると、才能があるように見えます。ところが、こういう子どもの特徴として覚えるのが早い分、同じことを繰り返して徹底してやり込むことはせずに、すぐに他の新しいことをやろうとします。そうすると平均的にいろいろなことはうまいのですが、ずば抜けて強い部分がない選手になることがあります。

 私は昔、大学で教育学部の学生と、体育学部の学生を指導していましたが、教育学部の学生は器用にいろいろなスポーツの種目を行うことができます。その代わり、ひと通りなんでもできるのに、これはすごいレベルだ、というものがありません。

 対照的に、体育学部の学生は飛び抜けたパフォーマンスを発揮できるものがあるけれど、それ以外のことがうまくできないという傾向がありました。つまり専門の競技は抜群にうまいけれど、他の競技をやらせると下手な学生が多くいたのです。

 卓球でも小さい頃にあっという間にうまくなり、まわりも「この子、天才かも」と思っていたら、その後、いろいろなことを覚えるけれども、試合になると勝てないとか、勝負弱いと言われる人が少なくないように思います。

 器用にできる子どもほど、ひとつのことをコツコツやるのではなく、すぐにいろいろなことをやってしまう傾向があるのでしょう。

 卓球という競技は技術の種類も多く、用具やプレースタイル、戦い方も限りなく多い競技です。器用にいろいろな技術を習得できる選手が強くなっていくように思われがちです。ところが、逆に言うと、そういう選手は、何かできないこと、克服しなければいけないことがあっても、すぐに違うことをやって解決しようとします。なかなかトップにはいけません。

 それよりも毎日コツコツ努力を続け、ひとつのことをやり続ける忍耐力や集中力を持ちながら卓球をやれる子が将来強くなっていくケースは多くあります。トップでやっている選手というのは実は才能ではなく、努力を継続できる人ではないでしょうか。目の前の克服すべき課題を見つければ、それを乗り越えようとします。目標を定め、それをクリアしようとしたら、その手順を考え、一つひとつをクリアして、目標を達成しようとする人が将来トップに立つ人だと感じます。

 オリンピックでメダルを獲った人も今まで数多く見てきましたが、そういう選手たちで、最初から飛び出していって世界の頂点まで行った人はいません。壁にぶつかっても諦めないで努力できる人、その努力を継続した人が世界で活躍しています。

2016年リオ五輪では激しい選考レースの末にリザーブに甘んじた平野美宇。そこから努力を重ね、2021年の東京五輪、2024年パリ五輪ではメダルを獲得した

トップに行くためには才能ではなく、日々の努力が欠かせない

 小さい頃に「才能あるね」とほめられて飛び出していった子が、その後、伸びなくなるのはなぜでしょうか。才能をほめられたために努力を怠る子もいるでしょうし、才能があると言われて、それが重圧に感じてしまう子もいるでしょう。

 小さい頃に大会で優勝した子には、そこで満足することなく、将来的な大きな目標と同時に、少し先の小さな目標を設定させましょう。また、大きな夢を抱き、「今、君はこの辺にいてまだ先は長いから、そのためにはこういう練習をしましょう」と説明しないと、大会で優勝したことに満足して、それ以上伸びなくなる子もいます。

 小さい時に勝っていた子が勝てなくなるとモチベーションが落ちてしまい、卓球そのものを嫌いになることもあります。「君の目標はまだまだ先にあるのですよ、目の前の結果だけを気にしてはいけないよ」と言ってあげましょう。

 私は「あなたは天才ではないよ、何もしなくてもできるような天才はいません」と子どもたちに言うことがあります。頑張って努力したら目標は達成できます。 

 子どもたちは「オリンピックに行きたいです、オリンピックでメダルを獲りたい」と言います。それは夢です。スポーツをする人が夢を語るのは素晴らしいことです。レベルによっては「県大会で勝ちたい」「全中、インターハイで勝ちたい」、これも子どもにとっては夢かもしれません。

 次に、それが夢ではなく、目標となった時にはあなたはどういう練習をしますか、どういう選手に勝っていきますか、その選手に勝つためにはどういう戦い方をするのですかと具体的なことを考えていくことが大切です。

 夢を語っているだけでなく、それを目標にするために、どう努力していくのかを具体的に考えることが大事です。それがオリンピックでも、インターハイでも、県大会でも、目標にしたら、目標達成のための順番を整理しましょう。

 一方、子どもが試合で勝ったりすると「うちの子は天才だ」と勘違いして、本来、目標は先にあるものなのに、目の前の試合で負けただけでものすごく怒ってしまう親もいます。そういうケースでは親がしっかりと子どもの目標を確認することも必要です。親が結果を気にすると、子どもも目の前の結果だけを気にするようになります。

 トップに行くためには才能ではなく、日々の努力が欠かせません。練習をあまりせずにメダルを獲ったオリンピアンを見たことはありません。子どもたちをほめる時には才能ではなく、頑張って努力することをほめてあげてください。才能は生まれ持ったものというよりも、作り上げられるものかもしれません。

     

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