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「残念」ではなく「よくやった!」と称えたい。日本男子・銀メダルが持つ真の価値

卓球王国PLUS独占記事「今野の眼」

チャイニーズタイペイに勝って、決勝進出を決めた日本男子
タイペイ戦で勝った瞬間
Text by
今野昇Noboru Konno

女子とは決定的に異なる「世界の勢力図」。55年間でわずか4回。決勝進出という「壁」

世界選手権ロンドン大会が幕を閉じた。決勝で中国に敗れた日本男子に対し、メディアの多くは「金メダルを逃して残念」という論調で報じている。しかし、この銀メダルを「惜敗」の一言で片付けていいのだろうか。

決勝が「日中対決」となったことで、男女ともに日本と中国の二強時代であるかのように錯覚しがちだ。しかし、男女で実情は大きく異なる。

日本女子は2014年の東京大会以降、6大会連続で決勝に進出している。福原愛、石川佳純、伊藤美誠、早田ひな、そして張本美和、橋本帆乃香といった才能が途切れることなく台頭し、世界における「対中国の筆頭」としての地位を盤石にしている。かつてのライバルだった韓国やシンガポールは若手が出てこず、欧州勢との差もある。

一方で男子は、1980年代から続く「アジアvs欧州」の激戦の歴史がある。中国、日本、韓国、チャイニーズタイペイといったアジア勢に対抗するのは、かつて世界を制したスウェーデン、近年ではルブラン兄弟を擁するフランス、さらに18歳の新鋭コトンが加わり、そのフランスの選手層は極めて厚い。今回のベスト8を見ても、ドイツ、ブラジル、スウェーデン、韓国と、どこがメダルを獲ってもおかしくない群雄割拠の時代なのだ。

歴史を振り返れば、その過酷さは明白だ。過去50年以上(1970年代以降)の歴史の中で、日本男子が決勝の舞台に立ったのは、1971年名古屋、1977年バーミンガム、2016年クアラルンプール、そして今回のロンドン。わずか4回しかない。

今大会、日本は張本智和(トヨタ自動車・世界ランク3位)、松島輝空(同8位)、戸上隼輔(井村屋グループ・同18位)という、まさに「史上最強」の布陣で臨んだ。WTT等の個人戦で中国選手を撃破してきた彼らへの期待感は、テレビや一般メディアでも「金メダルの可能性あり」の大合唱となるほど高まっていた。しかし、団体戦特有の重圧と意気込みは、通常のツアー大会とは一線を画すものだった。

タイペイ戦のトップで林昀儒を下した張本

選手たちが抱く「金」への渇望。誇るべき「銀」。そして未来へ

決勝直後のミックスゾーン、そして帰国後の記者会見。選手たちの顔に笑顔はなかった。 準決勝でタイペイを下し銀メダル以上を確定させた際、張本はこう語っていた。

「(メダル確定は)嬉しいが、ここは通過点。一気にぶち抜きたい。金メダルを獲って、過去の清算をできれば」

若き松島も「金以外はどの結果も同じ」と言い切り、決勝で敗れた後も張本は「勝てた試合だった。2年後にリベンジする」と悔しさを露わにした。

チームを率いた岸川聖也監督は、複雑な心境を吐露している。

「監督として選手とともに本気で金を取りたいと思っていた。ただ、帰国後に戸惑ったのは、周囲から『おめでとう』よりも『残念だったね』と言われることです。銀メダルを獲ることも、どれほど大変なことか……」

日本男子が掴んだ銀メダルは、決して「金に届かなかった敗北の証」ではない。ドイツやタイペイといった強豪をなぎ倒し、世界中の猛者がひしめく戦国時代を勝ち抜いた、誇るべき成果だ。

張本、松島、戸上の3本柱はまだ若く、これからさらなる進化を遂げるだろう。その後ろには川上流星のような有望な若手も控えている。

今の日本男子に必要なのは、周囲からの「残念」という同情ではない。世界を震撼させた彼らの戦いぶりに、心からの「よくやった!」という称賛を送るべきではないだろうか。

日本に勝ち、優勝を決め、喜びを爆発させた中国