【伝説のプレーヤーたち】中国を震撼させた男　高橋浩（後編）「私に絶対的なエースボールがあったら違った卓球をすると思う」

The Legends　第3回　高橋浩（1965年世界ランキング4位）

卓球王国2012年11月号掲載

クレバーな頭脳による、合理的な卓球理論と独自のプレースタイルで、
世界チャンピオン荘則棟を破った高橋浩。
その2年後に彼は日本代表から外され、中国に勝つことだけに費やした
2年間の努力が報われる機会を失った。
もし高橋浩がチャンピオンになっていれば日本の卓球の方向性は変わったかもしれない。
日本卓球史における大きな謎。
その時、彼は何を思いながら卓球と決別したのだろう。

◉たかはし・ひろし
1941（昭和16）年6月13日生まれ。東京都出身。高輪高校から慶応大へ進み、シチズンに入社。1965年世界選手権リュブリアナ大会の団体決勝で荘則棟、張燮林に勝った。65年世界ランキング4位。2年後、日本代表に選ばれずに、その後、現役を引退。シチズンではのちにシチズンアメリカの社長に就任した。

「魔のカット」とか「魔球」とか言われているけど、本当はどうなんだと観察した。「魔のカット」ではなかった。

　1965年4月。第28回世界選手権大会がユーゴスラビアのリュブリアナで開催された。日本代表という重圧で押しつぶされそうになりながら、高橋浩はこの日のために激しい訓練を乗り越えてきた。「当時は世界選手権に行って団体戦で勝つという使命があった。この一点だった」と言う高橋は、中国との団体決勝に向かって調子を上げていく。この頃は旧スウェースリング方式で、両チームの3人の選手が全員と対戦する9シングルスの試合方式。もつれると4時間も5時間もかかる時もあった。