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文武両道を貫く秋田高校。その先にあった12年ぶりのインターハイ

卓球王国PLUS独占記事

県立秋田高校卓球部

Interview by
今野昇Noboru Konno

秋田高校は木村興治(元世界選手権ダブルス金メダリスト)の母校である。
12年ぶりのインターハイ学校対抗(団体戦)秋田県代表の切符を手にしたのは、県内有数の進学校としても知られる県立秋田高校卓球部。 文武両道を貫く同校の鳥井拓弥監督、難波達矢コーチ、齊藤佑典キャプテンに話を伺った。

「喜びが爆発するっていうよりはホッとした感じですね。優勝した実感が湧いてなかった」(鳥井)

●―秋田高校のOBでもある鳥井監督、12年ぶりのインターハイ出場ですね。

鳥井拓弥監督(以下、鳥井): 私は秋田高校卓球部のOBですが、顧問になってからは今年が2年目です。私の現役時代よりも力のある選手が多い印象がありますね。秋田高は11年連続でインターハイ県予選の決勝で負けていました。OBとしてその悔しい歴史も知っていたので、なんとかしたいという思いは強くありました。

選手たちも卓球が本当に好きで、学業と両立させながら頑張っています。実は私の現役時代も県大会決勝で敗れていて、今回も直前の地区予選では秋田令和高校に敗れて優勝を逃していました。秋田工業高校も強く、3校の力は拮抗していたんです。

●―今回の県予選決勝では秋田工業高校と戦い、3-0で勝利しています。

鳥井: 3-0という結果でしたが、本当に苦しい試合でした。1番から3番まで競り合う場面が多く、ハラハラしっぱなしでしたね。ちなみに準決勝では秋田商業高校に勝ち、もう一方の準決勝で秋田工業高校が秋田令和高校に勝って上がってきました。

●―12年ぶりの出場を決めた瞬間は、感慨深かったのでは?

鳥井: 喜びが爆発するというよりは、ホッとした感じですね。直後は優勝した実感が湧いていませんでした。現役時代に達成できなかった目標だったので、ベンチからあの景色の瞬間を見せてもらえて、選手たちには本当に感謝しています。

●―最近の高校生チームは叫んだり跳ねたりして感情を表現することも多いですが、秋田高校は控えめな印象ですか?

鳥井: 選手にもよりますね。ワーッと大声で叫ぶ選手もいますよ(笑)。ただ、私自身は心の中で「よかった……」と胸をなでおろしていた感じです。

●―齊藤佑典キャプテンにもお伺いします。先輩たちが2年連続で決勝で敗れる姿を見てきて、今回どんな気持ちで大会に臨みましたか?

齊藤佑典キャプテン(以下、齊藤): 1・2年の時もベンチに入り、1年生の頃から団体戦に出させてもらっていました。先輩方が負けてすごく悔しがっている姿を見てきたので、自分が3年生になったら「今年こそは」という思いが強くありました。「かなりいけるんじゃないか」という手応えもありましたが、一方で不安も大きかったです。

自分が1番で出ることもあって緊張していましたし、チームみんなにも緊張感がありました。だからこそ、ちょっとした雑談で笑い合ったりして、緊張をほぐすような声をかけるよう意識しました。

●―現在、部員は何人いるのですか?

齊藤: 男女合わせて18名で、男子は3年が4人、2年が6人、1年が7人です。県予選で戦った3年生の中には、受験勉強に集中するためインターハイのメンバーから外れる選手もいます。県予選決勝のオーダーは、僕と3年の三上充紀、2年の仁部琉弥、1年の髙橋瑠生でした。

●―県予選の決勝前、自信はありましたか?

齊藤: 「自信」とは少し違うかもしれませんが、実力的に「優勝できる」と思っていたからこそ、そこから来るプレッシャーや緊張感はありました。

●―11年もの間、あと一歩で敗れてきた歴史があります。今回の決勝戦、「いけるぞ」と確信したのはどのあたりでしたか?

齊藤: 個人戦などでも秋田工業の選手に勝っていた実績があったので、決勝でも「今まで通りやれば勝ち切れる」と信じてプレーしていました。

秋田高校の練習風景

「選手たちは自分たちで課題を見つけ、自主練習に取り組んでいます」(難波)

●―難波コーチはいつから指導に入られているのですか?

難波達矢コーチ(以下、難波): 指導を始めて6年目です。私が高校2年の時に優勝し、3年の時に決勝で敗れてから11年連続で逃し続けていたので、卒業してちょうど11年目になりますね。

ただ、ここ2年ほどは仕事の都合で遠方の勤務地に赴任しているため、コーチと言っても月に1回行けるかどうかという状況です。秋田市内にいた頃は週1回ペースで通っていたのですが……。現在はもう一人、吉澤寅泰コーチも指導に入っています。

●―鳥井先生は日頃どのくらい練習に付き添えていますか?

鳥井: 部活がある日は顔を出すようにしていますが、進学校ということもあり、平日の規定練習(16:00~18:30)の後半や、遅いときは練習の終わり際にしか行けないこともあります。

●―となると、常に付きっきりで指導する大人がいるわけではないのですね。練習は選手たちが自主的にメニューを考えて行っているのでしょうか?

難波: 練習メニューのベースはこちらで決めたりアドバイスしたりすることもありますが、基本的には選手たちが自ら課題練習や自主練習に取り組んでいます。

鳥井: また、OBだけでなく社会人の方や大学生が練習に来てくれる機会もあります。こちらが型にはめて教え込むというよりは、多くの方からアドバイスを受けながら、選手自身が考えて実践しています。

齊藤: 来てくださったOBの方に順番に球を打ってもらったり、アドバイスをもらったり、練習メニューを見ていただくという形で指導を受けています。

●―日常の練習スケジュールについて教えてください。

齊藤: 授業は3時半に終わり、4から6時半まで練習します。体育で使う小体育館を部活で使わせてもらっています。あとは自主練習として、朝練でサーブ練習をすることもあります。

●―難波コーチ、11年前のご自身の現役時代と今のチームで、違いを感じる部分はありますか?

難波: 私たちの頃は朝練などはやっていませんでしたね。今の選手たちは自分たちで考えて工夫する面が増えていると感じます。そこは当時と大きく違うところですね。

●―難波コーチも今回の県予選決勝ではベンチに入られていたのですか?

難波: はい、ベンチに入っていました。私が3年の時から続いていた連敗でしたが、正直「11年分の借りを返すぞ!」といった気負いはありませんでしたね(笑)。

「今年こそは優勝したい」という思いで毎年臨んでいますし、過去の記録を変に意識することはありませんでした。選手たちがこれまで努力し、悔しい思いをしてきた姿を見てきたので、彼らの頑張りが「優勝」という最高の結果で報われて本当に良かったです。

3年生の齊藤佑典キャプテン
秋田県三冠王となった2年生の仁部琉弥

「自分で考え、思いっきり打ち込める雰囲気が秋田高校にはあります」(齊藤主将)

●―難波コーチから見て、今年のチームはどのようなバランスですか?

難波: 3年生の2人がしっかりとチームを引っ張ってきた印象です。2年生と1年生も非常に実力がありますが、中心となる3年生がどっしりと構え、そこに下級生が勢いよく乗っていく。とても良い相乗効果が生まれているチームだと思います。

●―キャプテンの齊藤選手は、どんなリーダーですか?

難波: 1年生の頃から唯一レギュラーとして団体戦に出ていて、もともと力のある選手でした。ただ、3年になった今年の戦いぶりを見ると、精神的にもすごく成長したと感じます。言葉でグイグイ引っ張るというよりは、プレーや気迫あふれる姿でチームを鼓舞するタイプのキャプテンですね。

●―進学校において、勉強と部活の両立は本当に大変だと思います。そのあたり、選手たちはどのように工夫しているのでしょうか?

齊藤: 卓球部に限らず、秋田高校には「自主性」を重んじる校風があります。勉強に集中したい人は勉強を頑張り、部活動に打ち込みたい人は思いっきりやれる雰囲気です。

……ただ、自分自身は両立というより卓球ばかりやっていますが(笑)。でもそういうタイプも多いですね。今年、秋田高校で団体としてインターハイに行くのは柔道部、山岳部、そして僕たち卓球部です。

鳥井: 文化部を含め、全国大会へ出場する部活動は多いです。「文武両道」は学校として昔から掲げている伝統であり、部活動を制限して「勉強だけしなさい」と言うことは一切ありません。

生徒それぞれが目標を持っていて、学業で高いレベルを目指す生徒もいれば、研究活動で全国的に活躍する生徒もいます。例えば生物部などは、研究にかなり力を入れて成果を出していますよ。

●―齊藤キャプテン自身は、勉強面で意識している工夫はありますか?

齊藤: 部活の練習時間が長いので、まとまった勉強時間を確保するのは難しいです。そのため、学校の休み時間や、家に帰って寝る前の隙間時間を活用して勉強するようにしています。

●―規定練習が終わった後も居残りで練習するタイプですか?

齊藤: 居残り練習することは多いです。帰宅して夕食を食べた後、30分ほど英単語を暗記するなどして、11時か11時半には寝ます。朝は6時頃に起きますね。たまに眠い時もあります(笑)。

授業に関しては、学校自体がハイレベルな進学校なので、頻繁にある小テストに向けてしっかり準備するだけでも自然と力がついていく感覚があります。

●―夏のインターハイに向けて、今後の勉強とのバランスはどうしていきますか?

齊藤: 今まで以上に意識して、集中して勉強時間を確保するようにしています。

鳥井: 3年生になると、少しずつ練習の頻度を調整しながら受験モードへ切り替えていく生徒もいます。そのあたりのペース配分は、各自の自主性に任せています。

●―齊藤キャプテンの進路希望は?

齊藤: 一般入試での大学進学を目指しています。学力試験でしっかり合格できるよう頑張ります。秋田高校の先輩方も大学進学後に卓球を頑張っているので、大学でも卓球を続けたいと思っています。

●―最後に、インターハイに向けての抱負をお願いします。

齊藤: 団体戦ではベスト16(ランク入り)を目指します!これまでインターハイに出られなかった分、チャレンジャーとして思い切りぶつかっていきたいです。強気の攻める卓球で勝利を掴み取ります。

難波: やっと掴んだ夢の舞台ですので、これまで切磋琢磨してきた自分たちの実力を100%発揮してほしいです。目標達成に向けて、最高の準備をして臨みたいと思います。

●―難波コーチから見て、このチームをひとことで表すと?

難波: 「準備が上手なチーム」ですね。今回の全県総体(県予選)もそうですが、県内の上位チームは実力が拮抗していました。その中で決勝を3-0で勝ち切れたのは、過去の敗戦を徹底的に反省し、対策と準備を重ねてきた成果です。自分たちの弱点と向き合い、準備できる強さを持ったチームだと感じています。

●―鳥井先生、最後に締めくくりのメッセージをお願いします。

鳥井: 今回のインターハイは、団体戦だけでなくシングルスでも3名(仁部、三上、齊藤)が出場権を獲得し、全種目で挑むことができました。厳しい県予選を勝ち抜いて得た切符ですので、決して「お客さん」になることなく、チャレンジャー精神で一戦一戦を戦い抜きたいです。勝利を重ねることで、日頃ご指導ご支援や応援してくださっている方々に良い報告をできればと思います。

●―本日はありがとうございました。インターハイでのご健闘をお祈りしています!

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▼秋田高校の偉大なる先輩木村興治

秋田高校卓球部は昭和23年(1948年)創部 

過去、秋田県総体で優勝8回
1958年〔監督 小林忠雄)
1978〔監督 新開仁)
1986年〔監督 小林洋)
1991年〔顧問 庫山)
2005年〔監督 伊藤則和)
2006年〔監督 伊藤則和)
2011年〔監督 伊藤則和)
2014年〔監督 伊藤則和)
*1984年は地元開催でインターハイでベスト16入り 
そして9回目
2026年〔監督 鳥井拓弥)
インターハイには今年で10回目の出場

●秋田高校を卒業して、その後、大学などで活躍した選手は以下の通り。
木村興治(早稲田大・世界ダブルスチャンピオン)・新開卓(早稲田大・全日本ダブルスチャンピオン)・新開仁(早稲田大・全日本学生8)・伊藤則和(早稲田大・全日本ランカー)・齊藤修(聖マリアンナ医科大学・全日本ダブルスランカー)・戸堀敏考(早稲田大・全日本学生3位)・松淵健一(明治大・全日本ダブルスベスト8)・野村順成(慶應大・関東学生新人3位)

高校は文武両道をモットーに掲げた秋田県No.1の進学校で、ここ数年は青森県や関西などから文武両道で卓球ができる高校として越境入学が見られるようになってきた。
現在は監督、コーチ、全て秋田高校卓球部OBで構成されており、齊藤修会長を中心としたOB会が卓球部をバックアップする体制が整っている。長い歴史の中で伊藤則和氏が長年顧問を務め、近年の秋田高校の強化に大きく貢献し強豪校に成長したといえる。選手を全国から集めている私立高校が占める卓球界の中で県立高校進学校で奮闘している卓球部である。