上田仁はなぜ今季で引退するのか。ブンデスで活躍しているのに、「『選手としての上田』よりも『戸上のコーチとしての上田』がまさった」

卓球マニア養成ギブス[ようこそ卓球地獄へ]私の高校時代
卓球王国ブックス「ようこそ卓球地獄へ」<第2章 卓球・卓球・卓球>より<その9>

Text & Illustration by
伊藤条太Jota Ito
スネ毛の生えそろった老けた連中が「集中!」とか「妥協するな!」などと聞きなれない単語を口々に叫ぶ
中総体で組み合わせに恵まれて県大会に出場できた私は、岩手県立水沢高校に入学すると一目散に卓球部に走った。そこで見たのは怖ろしげな練習風景だった。スネ毛の生えそろった老けた連中が「集中!」とか「妥協するな!」などと聞きなれない単語を口々に叫び、ときどき先輩どうしが口論したりしている。突然「チクショー」と絶叫しながら猛烈な素振りをする人がいたり、なんだかずっと正座したままの人もいる。頭を青々と剃り上げ、トレーニングのためと称して8キロもの道のりをリュックサックを背負って走って通っているという、明らかに努力しすぎの先輩もいた。そして、それらを監視するかのように、一癖も二癖もあるOBたちが不規則に練習場に現れるのだった。