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【アーカイブ】蔡振華「ナショナルチームが龍の頭。省のチームは龍の胴体になる」

卓球王国2003年7月号

世界的なカリスマ指導者
「蔡振華」という男
[2003年当時中国チーム総監督・中国卓球協会副会長]

華やかな選手時代の実績と、コーチとして中国の威信を復活させた指導力。
世界でも中国国内でもカリスマ指導者として高く評価されている蔡振華。劇的に変化する中国社会と選手を取り巻く環境。
その中で選手心理と社会情勢をつかみ、中国の卓球界のシステムの変革を推進した人物だ。指導者としての「蔡振華の哲学」を探る。<インタビュー2003年>

通訳● 高林博光

ツァイ・ゼンホア●1961年9月3日、江蘇省無錫生まれ。81年〜85年まで世界選手権で中国代表として活躍。現役引退後、イタリアにコーチ留学し、帰国後、中国ナショナルチームコーチを経て、監督に就任。97年からは総監督を務め、00年からは中国卓球協会副会長に就任、同時に国家体育総局卓球・バドミントン管理センター副主任、中国ユース協会副主席を務める。
このインタビュー後に中国卓球協会会長を経て、中国バドミン協会会長、中国サッカー協会会長も歴任した

Interview by

今野昇Noboru konno

ナショナルチームが龍の頭。省のチームは龍の胴体になります。頭が動けば体もついて動かなければならない

 

コーチとしては相手に勝つことが唯一最大の目標です。ただし、卓球というスポーツを管理する立場からすると、ただ勝てばいいというものではない

 選手としての輝かしい実績がある。
 1960年代後半から70年代にかけて、中国のスポーツの現場を混乱させた文化大革命。その後遺症から抜け出すべく、友好第一から勝利至上主義に突っ走った中国の卓球。
 1979年の世界選手権ピョンヤン大会の男子団体でハンガリーに敗れた中国は、2年後のノビサド大会で、主軸を若手に切り替え、蔡振華、謝賽克、施之皓を起用した。
 この大会で、それまで世界選手権を経験していなかった蔡振華はまさに中国の秘密兵器として大活躍し、優勝に貢献した。フォア面の裏ソフトとバック面のアンチラバーを、ボディハイドサービスの時だけでなく、ラリー中でも反転させながらフォアハンドのパワードライブに結びつけた。特に抜群の跳躍力を利したジャンピングパワードライブは強烈な威力を放った。
 初出場の81年ノビサド大会、83年東京大会ではエースとして活躍。しかし、83年のラバー両面異色のルール改正のあと、実質的な選手生命を終えた。85年イエテボリ大会後に現役を引退、華やかだった太く短い選手生命にピリオドを打った。その後、イタリアでのコーチ留学を経て、中国ナショナルチームコーチ、監督を務めた。
 コーチとしての実績も申し分ないが、39歳の時に中国卓球協会副会長に抜擢され、また政府の役人としての職も兼ねるというスーパー指導者である。このインタビュー後に中国卓球協会会長に就任し、さらに中国バドミン協会会長、中国サッカー協会会長も歴任した。


●——蔡振華さんは現在、中国男女チームの現場の総監督でありながら、協会副会長、国家体育総局での政治的なポジションを担っていますね。
蔡振華 2000年9月に中国卓球協会の副会長になった時、中国のマスコミに対しても話をしたことがありますが、コーチとしては相手に勝つことが唯一最大の目標です。勝つために戦術を立てて、相手に勝つことだけを考えています。ただし、政府の役人、卓球というスポーツを管理する立場からすると、ただ勝てばいいというものではない。あまり勝ちすぎると卓球人口が減ってしまう。もっと見る人に卓球の魅力を感じてもらうこと、多くの人に参加してもらうことがもうひとつの大きな目標です。
●——あなたのこれからの人生の中で、「総監督としての蔡振華」と「役人としての蔡振華」はどうやって両立いくのでしょう。
蔡振華
 政府の役人とコーチの立場は非常に矛盾点が多い。最近そういう矛盾の中で仕事し、生活しています。もっと多くの人に卓球を好きになってもらい、もっと卓球のマーケットを拡大していくのが政府の役人としての目標です。当然、コーチとしては勝たなければいけない。そういう全く違う分野の中で、難しいけれどもそれをクリアしなくてはいけない。
 一般大衆に卓球を好きになってもらうためには、テレビや宣伝の影響も考えなければならない。60年代、70年代の試合のやり方は本当に競技志向的なものでしたが、今はクラブシステムができ、プロリーグもできたので、総合的に考えると、いかにテレビ、マスコミを通じて、卓球を宣伝するのかということが大きな課題です。
 卓球は中国で「国球」と呼ばれています。いわゆる国技として一般大衆の卓球に対する愛着もあるし、スポーツの中でのステイタスが非常に高い。いかにそれを有効に利用し、拡大していくのか。地方のトップの役人とか地方の卓球協会が今後、いかに卓球を宣伝するのかが大切です。中国国内でももっと愛好者を増やしたいし、大局的なことを言えば、可能な限り、世界中での卓球のステイタスを上げていかなくてはいけない。
 最近中国の経済力も上がってきているし、10年前とはかなり違う。すべてのスポーツの基盤は経済と密接な関係があるし、経済的な基盤があればもっともっといろいろなことができる。最近中国はそれができるようになっている。
 中国は世界的な貢献をもっと考えなければいけません。そのためには、たとえば国際的なジュニアの交流、そのためにジュニアのトレーニングセンター設立、コーチの講習、教育、交流、そういうものを中国を中心に世界に広げていきたい。中国には卓球の仕事に従事する専門家が多いし、科学的な分析もできるし、政治的な協力もあるから、中国をひとつの発信地として世界に拡大したいと思ってます。国際卓球連盟と連動し、もっと中国卓球協会としても貢献していきたいし、私自身もそういう運動に貢献したい。
 指導者の立場からすると、新しいものがないと負けてしまう。負けてしまうと指導者としてはおもしろくない。だから勝ちにいく。勝つという目標に向かって、卓球のための科学研究所を使いながら、科学的な分析と、今までの経験を生かし、新しいものを作っていきながら勝っていかなくてはいけない。
●——これからは現場の指導者としての活動よりも、役人としての立場の比重が大きくなるのでしょうか。
蔡振華
 今は卓球とバドミントンが私の担当ですが、すでにそういうポジションについているので、これから現場から離れることが多くなるでしょう。私個人の考えですが、おそらく2004年のアテネ五輪以降、現場で指揮を執ることは少なくなるし、執らなくなることもあるかもしれません。

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