【アーカイブ】蔡振華「新たな勝利を手にするためには、まず昔の自分に勝っていかなくてはならない」
卓球王国2003年6月号掲載 蔡振華[中国チーム総監督(2003年)]Cai Zhenhua
2001年前の世界選手権大阪大会では全種目制覇を果たし、世界に冠たる「卓球王国」をアピールした中国。ところが、2002年のアジア競技大会では7種目中3種目の優勝にとどまり、11点制と新サービスルールへの対応の難しさを露呈した。
首都・北京での「密封訓練」を行う中国の蔡振華総監督を直撃。パリ大会に向けての意気込みを聞いてみた。

Interview & Photo by
通訳:高林博光
蔡振華/ツァイ・ゼンホア
1961年9月3日、江蘇省無錫生まれ。81年〜85年まで世界選手権で中国代表として活躍。現役引退後、イタリアにコーチ留学し、帰国後、中国ナショナルチームコーチを経て、監督に就任。97年からは総監督を務め、00年からは中国卓球協会副会長に就任、同時に国家体育総局卓球・バドミントン管理センター副主任、中国ユース協会副主席を務める(2003年当時)
21点制では前半で様子を見ることができたけど、11点制ではそれはできない。最初のスタートから決勝点のような気持ちでやらなくてはいけない
(2003年)3月中旬から国内に散らばっていた中国代表選手は、北京の体育路にあるナショナルトレーニングセンターに集結した。5階で男子の1軍と2軍が練習し、3階では女子の1軍と2軍が練習している。それぞれ10人ずつくらいのコーチングスタッフが、選手たちの練習を見守っている。
取材で訪れたのは、3月27日。ふだん、「選手の練習の集中力を最高の状態で保つため」に、このトレーニングセンターは報道陣を一切シャットアウト。もちろん報道陣でなくても、外部の人も特別の許可がなければ入館できない。今回、海外のメディアとしては卓球王国が初めて足を踏み入れた。
世界選手権直前の集合訓練。取材した日は女子チームは最終エントリーを決めるリーグ戦を行っており、緊迫した雰囲気に包まれていた。
2年前の大阪大会で全種目優勝を果たした王者・中国は、「アジアオリンピック」と呼ばれる昨年のアジア競技大会で7種目中3種目の優勝にとどまった。特に盤石と言われた女子団体ではエースの王楠が決勝で2点落とし、北朝鮮の後塵を拝した。11点制、新サービスルールを経て、中国チームはその強さを落としたのか。
パリ大会を控えて、中国の、いや世界のカリスマ指導者と言われる蔡振華総監督にインタビューを試みた。
◇
蔡振華 この2年間で11点制、そして新サービスルールと大きく変わった。このITTF(国際卓球連盟)によるルール改正によって中国チームは大きな影響を受けました。たぶん世界中のチームの中でもっとも大きな影響を受けたのは中国チームでしょう。
ルールというのはイコール、リズムです。私たちは従来のルールによって自分たちのリズムで試合を行ってきたのが、ルール改正によって、そのリズム、そして意識もすべて変わってしまった。これから新しいルールに対応した意識、考え方、戦術、というすべてのリズムを変えていかなくてはならない。
かつ、11点制によって選手育成法も根本的に変えていかなくてはならない。今はそれに対応して意識、戦術、そして練習方法などすべてを変えている最中です。
昨年(2002年)の韓国・釜山でのアジア競技大会で、中国はあまり成績が良くなかったけれど、それはある程度予想していたし、大会前にマスコミにも、今回は苦しい戦いになるに違いないとコメントしてました。実際にその通りになりました。
プラス思考に考えれば、これが中国チームが変化していくきっかけになったと思います。この大会をきっかけにいろいろ考えた理論、練習の仕方は、今すでにスタートしています。
今までの21点制では前半で様子を見ることができたけれど、11点制ではそれはできない。最初のスタートから決勝点のような気持ちでやらなくてはいけない。今まで21本では当然、技術、戦術、フォア、バック、サービス、レシーブという総合的なもので21本を争えば良かったけれど、これからはそうはいかない。
11本というのはあっという間に終わってしまう。スタートから1本を必ず取るという意識改革をして、練習方法も変えて、選手もふだんの練習の中でそれを実行している。最近は特に、心理的なものと戦術的なものを11点制に合わせてかなり変えました。

