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【People】谷口史子:大阪の卓球を裏から支える大黒柱

[NPO法人 大阪卓球協会理事長]

[たにぐち・ふみこ]
1962年4月12日生まれ、大阪府出身。泉北高、武庫川女子大卒業。大学卒業後は教員となり、卓球部を指導しながら、大阪高体連卓球専門部と大阪卓球協会の役員として大会の運営などを行う。現在は大阪高体連卓球専門部副部長、大阪卓球協会理事長を務める

Text by
中野正隆 Masataka Nakano

大会の運営はすごく好きです。
やっぱり、予定どおりに試合が終わったり、うまくいった時が楽しいですね

今年の4月、NPO法人 大阪卓球協会で全国的にも数少ない女性理事長に就任した谷口史子。高校の卓球部で指導を行いながら、長年にわたって高体連、大阪卓球協会の一員として大阪の卓球を支えている。

(卓球王国2024年11月号掲載)

 

 谷口が卓球と出合ったのは中学1年の時。「なんとなく」卓球部に入部したが、その面白さにのめり込み、中学・高校では練習に打ち込んだ。

 しかし、大学ではラケットを置き、「人にものを教えるのが好きだったのと、学費を稼ぐため」と、スイミングスクールでアルバイトをしながら、教員免許取得のための勉強に励んだ。

 大学4年時には倍率約20倍の教員採用試験に合格し、晴れて公立高校の保健体育科の教員に。初任校では水泳部の顧問を任されたものの、2校目から現在までは卓球部の顧問として生徒の指導に当たっている。

 谷口がこれまで赴任した高校は、どこも決して卓球が盛んな学校ではなかった。それでも、「生徒のモチベーションを上げたい」と、さまざまな学校との練習試合を企画。その過程で、大阪高等学校体育連盟卓球専門部(以下:高体連)の仕事も行うようになった。

 「もともと卓球界で知り合いがあまりいなかった。顔見知りが増えれば練習試合のお願いもしやすくなるかなと思い、高体連の仕事を始めました」(谷口)

 その仕事ぶりが評価され、2012年には高体連の委員長に就任。同時期に乳がんを発症し、高校は半年間休職したものの、高体連の仕事は治療を行いながらも続けたという。

 「抗がん剤治療を行いながら、大会が行われる時は会場に行っていました。大阪は試合が多くて大変です(笑)」

 また、大阪少年女子の監督として国体に4度出場し、3度優勝。「高体連の役員から監督を選ばないといけなかった。大阪女子はみんな強いので、私は言うことがない。本当に付き添いのおばちゃんでした」と笑うが、その明るい人柄がチームを活気づけたのは間違いない。

 さらに、谷口は高体連との掛け持ちで、大阪卓球協会の一員としても仕事を行う。裏方として全日本選手権などの国内大会から、98年にはアジア選手権、01年には世界選手権など、さまざまな大会の運営に携わってきた。

 「大会運営はすごく好きです。大阪で全日本選手権が開催された時も、1年目がうまくいったから、2年目からは好きに運営させてもらえました。やっぱり、予定どおりに試合が終わったり、うまくいった時が楽しいですね」

 そんな谷口は、昨年度には高体連の副部長、そして今年度からは大阪卓球協会の理事長に就任。現在は再任用として平日3日間は信太高校で教鞭をとり、残りの2日間は卓球協会の事務局で仕事に取り組んでいる。

 取材の最後にこれからの目標を尋ねると、「大阪の卓球人を支えること」という谷口らしい答えが返ってきた。

 「大阪では子どもから大人まで、年齢や性別関係なく卓球を楽しんでいる。中には、仕事を定年退職した後に卓球を始める人もいる。そういう人たちを支えていきたいですね」

 輝かしい舞台の裏には、必ず支える人がいる。谷口はまさしく大阪卓球界の大黒柱だ。 (文中敬称略)