卓球マニア濃縮エキス[卓球天国の扉]〈その19〉技術は何のためにあるのか
卓球王国ブックス「卓球天国の扉」より 〈その19〉
卓球コラムニスト・伊藤条太氏による爆笑卓球コラム本『ようこそ卓球地獄へ』の続編である『卓球天国の扉』(2015年発刊)。あなたはこの一冊で「天国の扉」を開けることになる。 ☆卓球マニア濃縮エキス☆

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第二章 卓球・妄想・卓球
技術は何のためにあるのか
高校時代、今ではラージボール界のカリスマとなっている、村上力さん率いる『桔梗苦羅舞』と団体戦で対戦したことがある。もちろん簡単に負けたが、そのとき村上さんが私の後輩との試合で見せた強烈に印象に残っているプレーがある。村上さんがバック前にサービスを出す。後輩はフォアでフリックしようと回り込んだが、サービスはネットインしたのでボールを返して構え直した。次のサービスもバック前に来て回り込んだがそれもネットイン。次もその次のボールもだ。回り込むたびにノーカウントになる異様な体験に首をかしげ始める後輩と、それを見てニヤニヤしている村上さん。最後はどうなったか忘れたが、このとき村上さんは、7本連続ネットインサービスを出したのだ。後に桔梗苦羅舞に入り、そのときのことを村上さんに聞いてみると「覚えてないけど、からかったんだろうね」と言った。そう、村上さんはネットインサービスをいくらでも出せる技術を持っているのだ。その後、私はテレビ番組に投稿するためにその技をビデオ撮影させてもらったが、3回ほどのトライでいとも簡単に連続13回のネットインサービスを成功させた(投稿は不採用だった)。
これは、村上さんに物凄いボールコントロールがあるということではない。実はコツがあるのだ。ボールに若干の前進回転をかけ、なおかつ第一バウンドをネット際にして上昇中にネットに当たるようにすると、かなり安全にコートに入るのだ。当然、ネットに触れなければひどいチャンスボールになってしまうから、これはまさにネットインだけを目的としたサービスなのだ。卓球の技術とは試合に勝つためだけにあるものとばかり思っていた私は、この相手を愚弄するためだけに考え出された恐るべき無駄な技術と、それを考え出した村上さんという人間の曲がった頭の使い方に心底感服した。

